景色と配置
〈引込線/放射線〉サテライト 多摩川二ヶ領上河原堰周辺の中洲 2020
Photo by Ray Thoma
二ヶ領上河原堰周辺は、人が余暇を過ごし多くの野生動物が活動する場所が、江戸時代から現在までの治水工事によって変えられた河川の形の周辺で混ざっている。2019年10月の台風19号でその形はまた少し変わっていた。川が氾濫していたら僕の家も水没しそうになったことを踏まえると(ハザードマップではアパート一階の自宅は天井まで水に浸かる場所に住んでいた)、ただの散歩コースで街の余白だと思っていたこの巨大な堰と堤防は、僕と同じように避難した人たちの生活のベースでもあることに改めて気付いた。
台風で運ばれた土砂が中州の形を変え岸とつながっていたので、そこにある石から好きなものを選んで他の石の上に置いたりして遊んでいた。離れるとすぐにどれがどれだかわからなくなったけれど、どこかから流れてきた石は一つ一つ形が違い、向こう岸に並ぶ建物も一つ一つ形が違った。水が大きく抉った地面や、コンクリートや、知らない人や鴨や鳶が混ざっている景色を眺めてほしいと思い、ここを展示場所/作品にすることにした。
(会期は2月初旬から5月いっぱいで、感染拡大時期とほとんど被っているので告知を見てこの場所に行った人はほぼいないと思うが、自粛要請をきっかけにその期間は普段より多くの人がこの場所を訪れるようになり、告知をした時に期待していた以上に場所や体と体の関り方(というか関わらないための関わり方)をそれぞれが試しているように見えた。)